教室に居ても図書館に居ても、琥珀の姿がないと、大切な何かをなくしているような気分になる。今まで鬱陶しいと思っていたのに、虫がよすぎるだろうか。だけど、“こんなもの、自分には必要ない”と思っていたものほど、失った後で、実は心の何処かで欲していたものだと気付く。多分、オレはずっとそうだった。

 遊びに興じるヤツらを馬鹿にして塾に通い始めた時も、バスケ部を辞めた時も。本音はきっと、“同志が欲しい”だったのだろうし、“両立できない自分が情けない”だったのだろう。オレはいつも、後悔してばかりだ。そして、まるで学習していない。

 ――分かっているから、前に踏み出そうと思うのに。もし“もう会いたくない”と言われたらどうしようなんて考えが頭をよぎって、あのまっすぐな瞳に向き合うことができないのだ。



「……なぁ、健。本当にそれでいいのかよ。お前はどうしたいわけ?」

「オレ、は……」



 オレのことが好きだって言ってたクセに、何で会いに来ないんだよ。お前、好きだから毎日会いに来るって言ってたじゃないか。もしかして、他に気になるヤツが……どんどん悪い方に、思考が転がっていく。

 見かねた在が、「もう俺が琥珀ちゃんに話聞いて来ようか?」と言う。頷きたいけど、頷けない。それはきっと、やっぱり自分の耳で直接答えを聞きたいという思いが、オレの中にあるからなんだろう。