「……琥珀ちゃん、何かいきいきしてるね。」



 ぽつりとこぼれた在の言葉が、やけに耳に残る。そうか……オレ達と居るよりも楽しいことを見つけたから、来なくなったのか。今の琥珀の学力なら、一人で勉強していても大丈夫だろう。オレが居なくても、やっていけそうな気がする。



「……あぁ、そうだな。アイツもそれなりに勉強できるようになったし、オレが居なくても平気だろ。」

「え、でも……健はそれでいいのかよ?」

「良いも何も……アイツがオレの教えを必要ないって思ったから、来なくなったんだろ?」



 理由がはっきりしたから、いつまでもここに残っている必要はない。来た道を引き返そうと歩き出したオレを、在が手首を掴んで引き止める。



「……ちゃんと話しなくていいのかよ。最近の琥珀ちゃん、俺らのこと避けてるっていうか、何か変じゃない?」

「アイツが話したくないなら仕方ないだろ。うるさいのが一人減ってせいせいするな。」



 ――自分の言葉に、自分で傷付くなんて。こんな思いをするなら、面と向かって理由を聞いてくればいいのに。そう思えば思うほどに、顔が合わせづらくなっていった。