橙色の絵の具を水で溶いて、サッと塗り付けたような空。それと同じ色に包まれた放課後の教室に、あたしと高須賀はいた。

 急な職員会議だとかで、運がいいのか悪いのか、部活は休みになった。彼氏以外の男の子と二人きりになるのは少し後ろめたかったけど、竜泉君にはちゃんと事情も話したし、校門の所で待っていてくれるそうで。あとは、友達に話を切り出すだけだった。

 ――ただ、“この前はごめん”と口にすればいいだけなのに。初めの一言がなかなか出てこなくて、無言の状態が、しばらく続いた。



「あの、高須賀……えっと……」

「この間はごめん!」

「え?」

「あの後ずっと悩んでたんだ……俺、すっげーヤな奴だったよな。」

「そんな!あたしだって、すごく嫌みな感じだったじゃん!」

「そうか?じゃあ、お互い様だな!」



 夏の名残りがある小麦色の顔から、白い歯がチラリと見える。そうだ、こいつはこいいう奴だった。安心したら、思わず笑みがこぼれる。

 あたしの方こそ、ついカッとなって申し訳なかった。そう口にしたら、「いや、誰だって怒るよな、あれじゃあ……」と返ってくる。多分あの日は、お互いに冷静さを欠いてたんだろうな。



「……俺さ、お前にずっと好きだって言えなかったんだ。でも、そいつ……お前の彼氏は、ちゃんとお前に気持ち伝えたってことじゃん。俺にできないことやってるんだから、勝てなくて当然だよな。」

「高須賀……」

「あ、同情はいらねーからな?でも、もしよかったら、これからも友達でいてくれたら嬉しいっつーか……」



 カーテンから、夕暮れの薄明かりが漏れてくる。影が徐々に色濃くなる中で、あたしはそっと息を吸った。