「っ……後悔しても遅いんだからね!」



 捨て台詞を吐いて消えた和田。ホッと息をついて振り返ると、乱れた制服を直しもしないで、ポカンとこちらを見つめている女が居た。



「……とんだ間抜け面だな。早く服を直せ。」

「あ、うん……」

「どうした、そんなとぼけた顔して。」



 尋ねると、「だって、健ちゃんが助けに来てくれるとは思わなくて」の返答。あぁ、そうだよな。オレだって、まさかお前のためにここまでするなんて思ってなかったよ。



「でも、よかったぁ……あのままじゃウチ、絶対危なかった!」

「本当だよ。オレが来なかったら、確実にその化粧は落ちて、お前は顔面真っ黒になってたな。」

「あはは、健ちゃん酷い!でも、そうだよね。ウチ、初めては本当に好きな人のために取ってあるから、来てくれてよかった。」



 太陽に透ける眩しい髪をなびかせながら、琥珀が言う。え、と一瞬固まるオレ。

 ――そんな校則違反の短いスカートや派手な化粧をして、何を言うんだ。意外と貞操観念はしっかりしてたのか。和田といい、コイツといい……女はやっぱり、よく分からない。

 でも、オレは気が付いていた。ようやく、自覚したのだ。隣に居る女が、いつしかとても大事な存在になっていた、ということを。