今年の終わりまで、あと二時間を切った、
大晦日の夜、22時13分。

天狼の間の受付に、モデルや業界人らし
くオシャレしてやって来たネコガールと
大火の姿を、

タキシード姿の背の高い、若い白猫が
見つけ、ニヤニヤしながら話しかけて
くる。

「あっれー? ネコガール、どした、
 その彼?

 君が男連れとは珍しいね!」

ネコガールは、それが、モデルと言って
も通用しそうなほどの美青年、いとこの
鯖(さば)であることに気づくと、努め
て冷静な声で、

「彼とかじゃないよ、仕事関係の人」

と答え、ちょっとガッカリ気味の大火に、
名前書きましょ、と言って、受付として
出されている長方形のテーブルの上で、
先に自分の名前を記入し始めた。