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ガタン、ゴトン。規則的なようで不規則な揺れに体を任せ、壱弥は隣でケータイ画面の中で踊る謎の半魚動画に魅入っている芽衣を窺った。

壱弥と芽衣に七恵と真鍋を加えた四人で学校から一番近い駅まで馬鹿な話をしながら歩き、駅からは各々別の電車に乗ったのが、つい十分ほど前。

七恵は風邪を引いて昨日、今日と休んだ姫華の見舞いに行くと言い、真鍋はこれから塾だから。と軽快に改札に吸い込まれていった。

二人を見送ってからやたらと天気ばかり気にする芽衣に、壱弥が何処かで夕食を食べて行こうかと訊くと、芽衣は少し悩んでやっぱり食べないで行くと二人分の切符を買った。

そうして改札を通ってホームで電車を待ち、目的地まで一時間以上かかる道のりを到着までただただ揺られながら待って現在に至る訳だが、最近の寝不足と疲れからか芽衣はふぁと欠伸をし、壱弥の肩に頭を乗せて目を閉じた。

閉じられたケータイが未練がましく文字を光らせている。

それがまるで少しでも時間を遅らせようとするみたいに感じられ、壱弥は溜め息を吐き出す。

するとすぐに、ぴくりと芽衣の瞼が震った。

「雨、降らなかったね」

「ああ」

壱弥が相槌をうつ。雨が降れば、後日改めて。という展開になっただろうに。生憎、雨は降ってくれなかった。
芽衣が再び喋る。

「もう何年くらい行ってなかったっけ?」

「じいさんとこに?」

「うん」

頷いた芽衣は緩く薄く引き伸ばすように目を開けてる。

その、世界を遮断するような芽衣の瞳の無感情さに、壱弥は背筋に嫌な寒気を覚えた。

「正月行ったし、まだ半年くらいだろ」

気味の悪い感覚を振り払うように、わざと声のトーンを明るくして答える。
芽衣はまた目を閉じた。