半分怒鳴られながらの告白は、初めてで、呆気にとられた。
しかもこの、好きだと怒鳴るのが真鍋の照れ隠しだと思うと、不謹慎ながらもおかしくなって、初音は小さく笑い声を立てた。
その笑みに、真鍋の柳眉が下がる。

「人が告ってんのに笑うってどうなんだよ、お前」

「だって、ど…怒鳴るからっおかしくて、ごめっ」

終いには肩を震わせて笑い出した初音の体が腕の中で蠢く。
骨と骨がぶつかる感触がいやで、乗せていた顎を引き上げて向き直ると、今度は初音の顔が真鍋の胸に埋まった。
背中に回された手に力が込められる。
指先がぐっと肉に食い込んだ。

「ごめん…もうちょっと、甘えてもいい?」

「……おう。許す」

「ありがとう」

どくどくと、尋常ではない速さで脈打つ鼓動が嬉しいなんて、なんて都合のいい女なんだろうと自分で思う。
絢人が駄目なら真鍋。そんなのは、ただの阿婆擦れだと思うのに。なのに、涙が止まらないのはどうしてなのだろうか。
笑って、安心した?張り詰めていたものが弛んで、気が抜けた?

理由は作れば作れるだけあるけれど、全部が全部違って思えて、正しいものがみつからない。

「里中、ちょっと黙って聞けよ?俺さ、一年の時に壱弥に惚れてるお前が、なんか可愛くて…気付いたら目で追うようになってて、ああ、今日もいるなぁ。みたいな、そんな感じで。けどお前、壱弥好きだろ?だから待とうって思ったわけよ。お前が壱弥に告って振られるの、待とうってさ。あいつ結構女と付き合ってたけど、結局華原しか好きじゃねぇからすぐ別れてたし、もしお前が彼女になったとしても続かねぇって高括ってて、とにかく壱弥に振られた弱みにつけ込む気だったわけ。そしたらお前、いきなり倉澤と付き合い出すし。ぶっちゃけ意味わかんねぇってムカついたけど。けど結局俺がずるかったんだよな。
振られるの待つとか、そういうの無しに告ってたら倉澤なんかにとられなかったかも知れねーじゃん?そう考えたらほんと、自分馬鹿みてぇつーか…でもやっぱ、今も弱ってるのにつけ込んだことになるんだろうな」