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土曜日の夜のファミレスは、何故か活気に満ちている。
テーブルの上に、氷が溶けて、水かさの増したクリームソーダ。突き刺さっているストローで氷を突付いてやれば、炭酸が白く濁った泡を生み出す。手付かずのバニラアイスが滑らかな半球のまま、泡に取り込まれまいと顔を覗かせているのが妙に滑稽だった。
「だからぁ、駅前で手相見せて欲しいって言われて見せたら、生命線が途切れてるから危ないとか変なこと言われて、むかついたから脛蹴って逃げてきたの」
隣のテーブルのOL風の二人組みが賑やかに談笑している声が聞こえてくる。狭い店内だ。例え会話を横から盗み聞かれても、聞くつもりが無くても耳に入るものは仕方ないと、諦めてもらうしかないだろう。
ストローから手を離し、絢人は左の手を開いた。
過去に、自分のてのひらを見て、運命線だとか生命線だとか騒いだ記憶はない。
星占いや姓名判断といった、少女達が気にする大雑把な分類の、大多数に当てはまる記述を読んで、一喜一憂した記憶もない。
けれどしかし、運命というものの存在は確かだと信じている。
「アヤちゃん」
呼ばれて、顔を上げる。妹の上総が「待たせてごめん」と悪戯に笑い、テーブルを挟んで正面に座った。
「久しぶり」
「はい、お久しぶりー!アヤちゃん、相変わらずカッコいいね。後姿でもホントかっこいい!!店の中見回しただけで、すぐわかったよ」
一息に喋って、上総はクリームソーダを手元に引っ張った。
お前こそ相変わらずマイペース。そう言おうとして、けれど久しぶりに会った妹が全く変わっていないのに安堵し、絢人は緩く微笑した。