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薄い皮膜の上に光が注ぐ。
太陽の光だと、反射的に枕に顔を埋めた。
枕から自分のシャンプーの匂いがして、ああ、そういえばこんな匂いだったなとひどくどうでもいい事を考える。
ふいに太陽光を遮って、影が落ちた。

「真鍋、もうお昼よ。ご飯食べに戻らなくてもいいのかしら」

声に目をやる。養護教諭の凛子が閉めていたカーテンの隙間から半身を覗かせ、苦笑雑じりに真鍋を見ていた。

「あー…」

口の中が気持ち悪い。喉が渇いた。体が鈍い。目を開けるのが、何か考えるのが倦怠だ。
そんなふうに、とにかくもうやたらと怠惰な気分で、真鍋は枕の下に手を入れてまた顔を埋めた。

「今日は壱弥がっこ来てねーから暇なんです。もうちょい寝かして」

寝惚けた声そのままに言うと、凛子はひとつ咳払いをしてベッドの端に腰掛けた。

「……なんですか?」

無言でいる凛子に真鍋が問う。纏う空気が重かった。

「昨日の放課後、大変だったみたいね」

潜めた声が、眠気を拡散し、頭を覚醒させる。目が覚めた。

「さっき緊急の職員会議で二週間の謹慎処分が決まったんだけど、詳細は公にしたくないって瀬川のお母様から電話があってね。表向きは」

「表向きは音楽室のドアの破損とかその辺っしょ。俺一応クラス委員だから知ってますよ」

状況確認やら何やらで朝早くに呼ばれたことはあえて黙って、真鍋が寝返りを打つ。喋っている途中で遮られた上に背まで向けられた凛子はむっとして、寝癖のついた真鍋の頭をぐしゃぐしゃと掻きまぜた。

「心配してるのにちょっと冷たいんじゃない?」

真鍋の顔が凛子を振り仰いで、視線が交わる。
心配?
にやりと真鍋の口元が歪んだ。