「優衣、帰ろっか?」

 自分でも頬が緩むのが分かる。それに合わせてか優衣がポッと頬染めながら可愛く頷く。

 ふと、優衣から視線を外し後ろを見ればちょうど梨海ちゃんが教室から出て来る所だった。

「ずいぶんお熱いようで」

 からかう様な笑顔で俺と優衣をチラチラ見る。

「あれ?舞希ちゃんは?」

 いつも一緒にいるはずの3人。帰るときも確か3人で帰ってたはずだ。

 1人欠けているだけで違和感を感じた俺は、二人を交互に見やった。

「先輩、恋する乙女は辛いんですよ」

 ああ、そういえば……と脳裏に浮かんだのはジョンにキスされた舞希ちゃんの姿。

「舞希ちゃん何て?」

「今日放課後残って考えるって」

 うーん。舞希ちゃんは啓輔のこと好きだから、そんな不安はないけど、5年だよね……。

 きっと舞希ちゃんは揺れてる。

 自分を思ってくれてる相手か、自分が見つめる男。

「じゃぁ、啓輔にメールしとくよ。帰り女の子ひとりで帰らすのはアレだからね」

「よろしくお願いしますね。……あと、優衣も」

「はいはい、分かってますよ。優衣、荷物持ってきな」

「あ…はいっ!」

 優衣に荷物を持ってくるように促し、俺は携帯を操作する。