話が反れた。
ボクらは例のごとく終電を逃し、今夜の寝床を探していた。

既に4リットルほどのビールを胃袋に収め、
アルコールスーパージャンキー(略して、アルスージャン。コレ、絶対
数年後の流行語大賞だと思う)と化していたボクは、それでも

「夜の街東京ガイド」「酔いどれツアーコンダクター」として、
カトさんにふさわしきべき寝床を考える。

「意味深な夜更けのマンキツ」を推奨するのも良かろう。
「人気のない手コキマッサージ屋でシコシコ眠りにつく」のも良かろう。

だが、ボクはそこで素っ頓狂な提案をしてしまった。


「ラブホどう?」


予想外の返答に慌てふためくかと思われたカトサンであったが、
そこで、ピンク色に頬を紅潮させながらつぶやいた。


「面白そうだし、イイよ」


12年経ってもカトサンの人の良さは変わらない。


いざ、「男同士のラブホ捜索ツアーへ!」


ゾンビ観光でございます。


***


一店目。

店は駅近くにあった。
平日だというのに既に行列。

ヤリタイ盛りのハイティーンが、行列をなして、今か今かと
セックスを待ち望んでいる。彼らの表情には「余裕」すら
うかがえる。

ボクらはそんなヨゴレタ奴らを、無言で罵倒しながら、
フロントのおばちゃんの下へと近寄る。


ボク「すいませーん。部屋開いてますか?」
おばちゃん「申し訳ないですが、男性同士はご遠慮願います」


瞬殺。



ヒョードルに挑んだズールだって、もう少し頑張った筈だ。


エレベーターに力なく戻ったボクらはまるで、捕虜確定の
兵士の様。そんな時、盛りのついたハイティーンの声がボソッと
聞こえた。


「あの人たち、ゲイかな・・・」
「ゲイだと思うよ」
「ワ!気持ちワル」
「ゲイだよ!ゲイ」
「ゲイ気色ワルッ!」
「ゲイキモッ!」
「アンキモッ!」
「キモキモキモッ!」


「ヌオオ・・・」