花畑だ。

 ふと足元を見ると、可愛らしい紫と黄色の花が、頭上の太陽に向かって一生懸命に顔を見せていた。背丈の低い草たちは、風になびかれて囁きあう。とても綺麗――いや、美しい世界だった。

 前に進まなくてはいけない気がして、一歩を踏み出した。柔らかい草を踏む、リアルで心地の良い感触。よく見ると、私は裸足であった。けれど不快感は全くと言っていいほど無く、私はさほど気にせず歩き続けた。

 そのうち、さらさらと何かが流れる音が聞こえてきた。私は駆け出した。しばらくすると、小川とそれに架かる橋が見えてきた。橋は丸太で出来ているようだった。
 私は立ち止まって、しばらく川を眺めていた。透き通っていて綺麗な水だったけれど、魚は泳いでいなかった。


 なんとなくだけれど、目の前の橋を渡らなくては行けない気がしてきた。私は丸太に足を乗せた。


 けれどその瞬間、丈夫そうだった橋は崩れ落ちてしまった。それと同時に私も驚き、地面に尻餅をつく。元々橋として機能していた丸太たちが、橋の残骸となって下流に流されてゆくのをじっと見つめながら。

 私は呆気にとられていた。どうすればいいのだろうか。

 考えていると、急に眠気が襲ってきた。今までずっと眠っていなかったような気がした。私はそのまま後ろに倒れこんで、草に身を沈めた。そして、そのまま眠ってしまった。