「夢の中で分かる。だからさっさと寝ろ」

「…………」


 私は能天気にふわふわと漂う幽霊を睨みつけたが、彼は笑ってばかりで動じなかった。
 まあ、いずれ分かることならいいかと、私は大人しく目を瞑った。

 しかし、さっきまでぐっすり寝ていたのだ。そんなにすぐ眠れるはずがなかった。


「まだか? はやく寝ろー。は、や、く!」


 横からちょっかいを出される。人に寝ろ、と言っておいて、寝かせないつもりか。
 寝返りは打てないから、仰向けのまま布団を被る。しかし、それでも騒音は収まるはずはない。

 私は布団から顔を出して、大声で――大声と言っても病室の外に聞こえないくらいに――彼を叱咤した。


「あのねえ、そんなにうるさかったら眠れないから。静かにしててっ」


 しかし、誰も居なかった。
 ――どこかに隠れたんだ。どこか、私の見えないところで笑っているのかもしれない。

 私ははあ、とため息をついて、再び布団を被った。