「で、千郷。さっき誰かと話してたの?」


 お母さんが核心を突く。再び、大きく心臓が跳ねた。全部、聞こえてたのかもしれない。
 ちらりと橋川幽霊を見遣ると、彼は手をひらひらさせながら言った。


「俺の声は多分、他のやつには聞こえねえよ。ほら、よくあるお約束だ」


 やっぱり。でも、彼の声が聞こえてなかったとしても、私の声が聞こえてたらそれが問題になるのだ。

 どう説明しようか。ここは普通に「独り言だよ」とか言うのがベターだろうか。
 あんまり言葉に詰まると逆に不自然に思われる。そう、独り言、独り言だよ――。


「ひと――」
「まあいいか。空耳よね?」
「うっ……ん。多分そうだよ」


 あはは、と苦笑いしながらも、心の底でため息をついた。