「唯は…アレルギー無いと思いますが、きちんと聞いてないので、また後で聞いて、伝えます。」
「それはありがたいです。では、後ほど。」
 幸せ時間が終わった。話の内容は、アレルギーについてだった。今日の夕食と関係あるそうだが、心配は無さそうだ。大抵の食材を食べさせたが、特に嫌がる事も無かった。

 このまま風呂に入れば、上がる頃には唯と合流出来るだろうと予想して浴場へ向かった。

「おや、しょうくんさんじゃないですか。今からお風呂です?」
 男湯へ神坂さんが入ろうとしていた。
「外で遊んでちょっと汗かいたので。神坂さんはお風呂のお掃除ですか?」
「ええ、男手が無いので男湯の掃除も私がうけたまわってるんですよ。」
 確かに、ここの旅館には男性がおらず、力仕事は宿泊客が手伝ったりしている。
「じゃあ、僕も手伝いますよ。」
 流石にここで退いたら面目が立たない。それくらいする時間はあるだろう。
「そんな、悪いですよ。」
「気にしないでください、僕の好意を買っていただけたら嬉しいです。」
 神坂さんは少し考え、お辞儀をして言った。
「では、お世話になりますね。」
 上げた顔には、笑顔が浮かんでいた。

「しょうくんさん、湯加減は如何でしょうか?」
「はいー、気持ちいいーですー。」
 二人で掃除をすると、あっという間に終わり、一番風呂をいただけた。勿論神坂さんは脱衣所にいる。
「あ、神坂さん、お願いがあるんですが。」
「はい、何ですか?」
 女湯の唯の事が気掛かりになり(覗きたい等ではなく)、様子を伺ってきて貰うように頼むと、快諾してくれた。
「では、私はそのまま夕食の買い出しに向かいますね。」
「はい、お願いしますー。」

 一人になると、頭の中に沢山の情報が錯乱しているのが分かった。
「…少し整理しよう。」
 ここまで色んな言葉を使いすぎた。目を閉じて、初日からのやり取りを思い出す。

4月初頭に唯の所に届いた招待状、そしてゴールデンウィーク前の唯の決断。僕の付き添いの決定。
そして一昨日の雪景色。

 アイツは言った。奴は言っていた。
『あそこは四季が追いついてないんだ…いうなれば、時空がズレてるんさ…』

『あそこは、こことは違うということを、念頭に置け。』