楽しみなことがあると、時間ははやく過ぎてゆく。
とってもありがたい。

5時。
校門には、冷たい風が吹きつけていた。

「万琳、お待たせ。」

気付けば、瞬くんが後ろにいた。

あたしたちが一緒に帰れるのは、週に1回。
多い時でも、週3回くらい。

その理由は・・・。

「あのさ、万琳。」


こうして話を切り出すときは、いつもあの話だ。

「きのう、こんな相談があったんだ。」

瞬くんの話によると・・・


ある女の子が、
「彼氏が浮気しているらしい」と話した。
でもその子も、彼氏とは別に、本当に好きな人がいる。
だから、どうやって別れ話をしたらいいか、ということだった。


「万琳なら、どうする?」

瞬くんが、不安気に聞いてきた。

あたしはそんなの、考えられない。

瞬くんが、あたしの初恋だ。

瞬くんのこと、本当に好き。

でも、もし、

そう言いきれなくなったら・・・。

「・・・あたしはきっと、
『ごねんね、別れて』って言うと思う。」

ありきたりだと思う。

でもあたしには、これが精一杯だ。

「万琳。」

優しく、瞬くんがあたしの名前を呼んだ。

「・・・そんな追いつめられた顔、しないで。」
そう言って、あたしの髪をくしゃくしゃにする。

やっぱりあたしは、ときめいてしまうんだ。