「アイツのこと……よろしくね」
「アイツ……? アイツって?」
「アイツよ。リュウよ」
「あぁ、リュウのこと」
「アイツ、東京に出て来てから友達なんていなかったから……。つくろうともしてなかった。アイツは“ツレはつくろうと思ってつくれるもんじゃねぇ”なんて言ってたけど、本当は友達をつくることから逃げてたんだと思う。過去の代償を背負って一人で生きていこうとしてる……」
「過去の代償……?」
「そう。アイツはずっと罪の意識に苛まれてきたの。アイツの言うことも一理あるけど、自分から歩み寄ることだって大切だと思うわ。そんな中、アンタと出会った……。今、アイツに必要なのは友達の存在。アンタしかいないの、アイツを過去から解放してあげられるのは。だからお願い。アイツを心の闇から救ってあげて……」
「……」
 マキオはカナの素顔を見た気がした。リュウの過去も気にはなったが聞いていいものなのか、カナの懇願を受け入れるにもどんな傾向と対策を立てればいいものなのか、マキオには思い浮かばなかった。困惑するマキオにカナはさらに歩み寄った。
「アイツと私、本当の兄妹じゃないの」
 カナは告白した。
「えっ!?」
 マキオは驚いた。
「血が繋がってないの、私達」
 カナは知っていた。