カナの十六文キックがマキオの土手っ腹にめり込んだ。
「誰が猟奇女よ! 誰が奇怪なもの、異常なものに対して満足を得る女よ!」
「ご説明どうも……うぅ……」
 マキオは腹を抱えながらカナに対する苦手意識が芽生えたことを自覚した。
「せっかくこないだのこと謝ってあげようと思ったのに。さっきのことも……」
「えっ?」
 カナの思いがけない言葉にマキオは少し驚いた。
「でもやっぱりやめた。気が変わった」
「気が変わった。って」
「私は猟奇女ですものね? 猟奇的な彼女。そう、私はチョン・ジヒョン」
「いや、そうとは一言も……。僕はチャ・テヒョンでもありませんし……」
「そんなことわかってるわよ! アンタなんかキョヌとは似ても似つかないわよ! バッカじゃない?」
「バッ……!?」
「でも、猟奇女とは言ったわよねぇ?」
「それは……」
「ほら。認めたじゃない。猟奇女呼ばわりされて頭下げられるほど私は安くないのよ!」
「もういいです……」
 マキオはこれ以上の押し問答をしても仕方がない、これ以上の面倒は御免を被りたい、なにより時間の無駄だと思いその場から立ち去ろうとした。
「嘘よ。リンに彼氏がいるなんてウソよ」
 マキオは反射的に振り向いた。