カナのクロスカウンター。マキオは言葉を失った。
(なんなんだ!? この女は! 僕が言ったことを聞いていたのか? オタクがこの国の経済に与える影響をわかっていないのか? それを僕がわざわざ数字を挙げてわかりやすく説いてやってるのに……遮断しやがった!)
「それに、経済効果が4,410億円ていっても日本のGDPのたった0.08%じゃない。たいしたことないわよ」
「なっ……」
 カナのフック。しかし、マキオは立て直した。
(なんて浅はかなんだ、この女は。物事を表面からしか見ることができないなんて。ああ嘆かわしい。オタクの購買意欲と消費量を侮っているんだ。一般消費者のそれ以上だぞ。オマエなんかのそれ以上だぞ。それをたったの0.08%!? 本屋の営業利益率じゃないんだぞ! 大気中の二酸化炭素より多いんだぞ! 二酸化炭素といえば猛毒だ。20%で人を死に至らしめる猛毒なんだぞ、猛毒。その二酸化炭素より多いってことは……い、いけない、完全に脱線してしまった。僕ともあろう者が。今の命題では原因と結果を立証することはおろか、結論も導き出せないまま混迷するところだった。落ち着け。落ち着くんだ真樹夫。もう少しの辛抱だ。あと15分もすれば彼女《リン》が現れるんだ。そしたらこの女《カナ》ともお別れできるんだ。あと15分もすれば……)
「リンなら来ないわよ」
「エッ!?」