「おそらくな。木嶋は“13”という数字に異常な執着を見せている。13番目の使途、13日の金曜日、今年は木嶋が高校を卒業してから13年目。このことから木嶋という男は非常に計画を重んじる人間。極めて冷静で冷酷な完璧主義者。この事件は何年も前から、もしかしたら13年前から計画されていたものかもしれない……。ゆえに君の素性はおろか、家族の素性まで調べ上げていたとしても不思議じゃない」
「そこまで計画的な人間がなぜ計画外のことを? 本来なら次の犯行は11月13日の金曜日のはず。それなのに実行されたのは10月25日……」
「ここからは僕の推測によるが、木嶋の当初の計画は2月13日にユダの末裔であるお兄さん、3月13日に同じく君、そして11月13日にユダであるお父さん。この3回の殺人で木嶋の言う洗礼の儀は完了するはずだった」
「兄さんまで……2月13日はそういうことだったのか……」
「しかし、その計画を邪魔する者が現れた。それが藤真竜だ。2月13日、木嶋はお兄さんの帰路を狙って高円寺を訪れた。木嶋はお兄さんの背後から忍び寄ろうとしたが、その間を遮るように自分の前を歩く男がいた。木嶋はそれが藤真だとわかった。その日は何事もなくお兄さんは自宅に帰り、1回目の洗礼は失敗に終わった。3月13日、再び木嶋は高円寺を訪れた。今度は君を狙って。しかし、君の姿を見つけることはできなかった。それもそうだ。君はあの日、藤真のライブを観に吉祥寺にいたんだから。2回目の洗礼も失敗に終わり、木嶋の中でその元凶が誰なのかが浮き彫りになった。真っ先に排除すべきは藤真竜だと……」
「ちょっと待って下さい。今の話だと木嶋は僕とリュウの関係まで知っていたことになる」
「言ったろ? 木嶋が君の素性を調べ上げていたとしても不思議じゃないって。藤真との関係だって例外じゃない。それに、藤真のブログを見ればライブの日だって簡単に特定できる。藤真はブログに君の名前こそ出していないが、2人の関係を知る者が見ればそれが君のことだということもわかる。それでも1つだけ、木嶋に知り得ないことがあった。今回の事件の引き金になったあること……。それに気づいた藤真はブログで一切そのことには触れていない」
「なんですか!? その事件の引き金になったあることって!」