「さすが話が早い。好きだなぁ僕、そういう頭のイイ人間が」
「御託なら結構!」
「派遣だよ」
「派遣?」
「藤真と木嶋の接点は派遣社員。2人は同じ派遣会社に登録していて、しかも同じ職場に派遣されていた。つまり、2人は顔見知りだった」
「その派遣先って、もしかして……」
「東京大学医学部付属病院中央診療棟」
「そんな……」
「2人は最初から東大病院に派遣されていたわけじゃない。出会ったのは別の派遣先だった。当時の同僚によると木嶋はよくキリスト教の言葉を使って高校時代の教師への殺意を口にしていたそうだ。“メシア”“ユダ”“エルサレム”……。それを藤真は聞いてしまった。“御手洗隆治”君のお父さんの名前を……」
「1年前の事件が発生したあの日、なぜリュウは高円寺に?」
「犯人が事件前に犯行予告を書き込んでいることはよくある話だ。ニュースでも取り上げられてるしな。だから藤真も最初は興味本位からだったんだろう。それが偶然にもあの書き込みを見つけてしまった。胸騒ぎを覚えた藤真はすぐに高円寺に赴き、真樹夫くん、君に出会った。君の名前を知った時、彼はさぞかし驚いたことだろう」
「木嶋もその時高円寺に?」
「いや、木嶋の性格から考えてそれはない。木嶋は突発的な行動はしない人間だ。あれは犯行声明にすぎない。だが、あの事件がきっかけになったことは間違いないだろう」
「東大病院にはいつから?」
「木嶋はあの書き込み後、すぐに東大病院への派遣を申し出ている。君の動向を探るためだろう。これから始まる洗礼の儀を遂行するための事前調査とでも言うべきか……。それを知った藤真も後を追うようにして東大病院に派遣先を変更した」
「木嶋は僕が東大に通っていることを知っていた……?」