あれから父は事件の対応に追われた。世論の批判、マスコミの糾弾、教育委員会への上申――。野次馬に脚色された情報を傍観者が金で買い、人の不幸を餌にする人間が蜜に群がる蜂のように家まで押しかけるゴシップ連鎖。憲法第21条 表現の自由――その曖昧な棄損ボーダー。ペンが剣より強いことを思い知らされる瞬間なのかもしれない。
そんな喧騒も今では水を打ったよう。火が消えればほとぼりも冷める。蛍はより甘い水を求めているんだ。自分の懐を肥やしてくれるエサを――。
「マスコミの責任とはなんだ!?」
 マキオは二階にある部屋の窓から外に誰もいないことを確認すると家を出た。ある場所に向かうべく――。