「呼び出された?」
「ああ。あの日、家に電話があったんだ。私は留守にしていたから母さんが出てな。木嶋が久し振りに私に会いたいから午後7時15分に高円寺駅で待っていると。随分中途半端な時間だとは思ったんだがな。木嶋のことは気になるし、会いに行くことにしたんだ。商店街に入ったあたりで後ろから近づいてくる気配を感じて、振り向いたらナイフを持った木嶋だった。私はとっさに逃げようとしたんだが、このとおり右腕に傷を負ってしまった」
「どうして警察に嘘の証言なんか……?」
「償い……。馬鹿なことをしたとは思っている。そんな嘘が警察に通用するわけがないこともわかっている。教育者として愚の骨頂だ……! だがな、木嶋が私を殺したい動機もわかるんだよ……。あの時の私にはそれくらいしか思いつかなかった……。木嶋をかばうことしか……」
 マキオは父の言葉を信じたかったが、「木嶋をかばうためじゃなく、自分の地位を守りたかったんじゃないのか?」父の保身を疑い、「今の父なら……」それを飲み込んだ。
 そして核心に踏み込む。