空から降る1粒の滴がマキオの頬に落ちた。
「つっ……」
 マキオは気がつくと路地で倒れていた。あたりはすっかり暗くなっている。握りしめていたはずのチラシはバラバラに破られ散乱していた。
「痛い……」
 意識の回復と共に増す体の痛み。感覚に伴い開放される感情。今まで堪えてきたものが一気に溢れ出す。マキオの心境を表すかのように空が泣き出した。もはや顔を濡らすものが雨なのか涙なのかさえわからない。
「痛いよぅ……」
 マキオは泣いた。格好悪いくらい泣きじゃくった。すでに本能を塞き止める理性は決壊していた。悲しくて、情けなくて、悔しくて、悔しくて、悔しくて……さみしくて……。
「痛いよぅ……痛いよぅ……心が痛いよおぉぉぉ!!」
 一人の青年の叫びが、都会の夜空を切り裂いた――。