「そんな目で僕をみるなぁ! そうだ! オマエはいつもそうやって僕のことを見下してたんだ! 中学でも高校でも、いくら頑張っても学年1位になれない僕を心の中で笑ってたんだ!」
「そんなことで……」
「そんなことだと? わかるか? 僕がどれだけ惨めな思いをしてきたか。オマエにわかるか? どんなに勉強しても2位にしかなれない僕の気持ちがオマエにわかるのかよ!」
「それで人を傷つけてもいい道理にはならないよ」
「道理だと? はっ、笑わせんな。だったらアイツはどうなんだよ!?」
「アイツは……リュウは僕のプライドのために……」
「プライド? あんなヤツにプライドなんかあるかよ!」
「もういいだろ?」
 マキオは怒れる感情を拳の中で握り潰そうとしていた。自分のことなら何を言われてもいい。ただ、友達を誹謗されることは我慢ならない。だけど……。マキオは殴られた痛みなどとうに忘れていた。
「見逃して欲しいか?」
「えっ……」
「だったら土下座しろ。土下座して俺に許しを請え。そしたら見逃してやるよ」
「……」
 マキオは歯を食い縛って両足を地面に着いた。込み上げる涙を必死で堪えた。ここで泣くわけにはいかない――リュウのプライドを守りたいから……。
「友達が待ってるんです……。だから……そこをどいてください……」
「ハハハ。いい気味だな、マキオ。俺が味わった屈辱、オマエにも存分に味わわせてやるよっ!」
 相沢は土下座するマキオを蹴り飛ばした。
「お願いだ!」
 懇願するマキオを相沢はなおも蹴り続けた。
「どいてくれ! 頼むから! リュウが待ってるんだ!」
 マキオは殴られても殴られても、相沢にすがり続けた。
「頼むからどいてくれえぇぇぇ!!」