「やっぱり一目でも……」
 マキオはリュウのもとに向かおうとした。
「今はダメだ!」
 それをショウが迫力で止めた。
「どうして……?」
「今は、面会謝絶なんだ……」
「そう……。じゃあ僕もここで待つよ」
 マキオはソファーに腰を掛けようとた。
「バカヤロー!」
 それをショウが威圧で止めた。
「ショウさん……?」
「リュウとの約束忘れたのか! 司法試験合格すんだろ!? こんなところで油売ってる場合じゃねぇだろうが! 約束破る気かよ。約束は守るためにするから約束っていうんだ……。少しはアイツの気持ちも考えてやれよ。お前はアイツのプライドでもあるんだから……」
「そうよ!」
 それまで黙っていたカナが口を開いた。カナは立ち上がってまっすぐマキオを見据えた。
「約束したんでしょ? だったら守ってよ。こんなところにいないでさっさと帰りなさいよ! お兄ちゃんのために……。お願いだから……!」
「カナちゃん……」
 カナの頬を伝う滴をマキオは見逃さなかった。
「わかった……」
 マキオは静かにその場を後にした。

 午後10時06分、帰宅したマキオはベッドに身を投げて目を閉じた。
(死ぬな。リュウ……)