「オマエの口からその名前が出てくるとは思わなかったぜ。ああ、元気だよ。あれから一度だってオマエのことなんか話しもしねぇけどな。でも安心しろよ。レイには俺がついてる。これからもずっと……」
「そうか……よかった……」
「よかった……だと? つくづく中途半端な野郎だなテメェは!!」
 凍りついた空気を溶かそうとマダムが割って入ろうとした。
「ショウちゃん。ちょっと口が過ぎるわよ。ケンカしに来たわけじゃないでしょう?」
「オカマは黙ってろ!」
「まあ! アタシはオカマじゃありません! ニューハーフよ」
「うるせぇ! どっちだっていいじゃねぇかそんなこと!」  
「そんなこと……ひどい!」
 ショウのマダムに対する言動をリュウは一喝した。
「ショウ!!」
 ショウの矛先は再びリュウへ。
「音楽もパッとしなけりゃツレもパッとしねぇなあ。路上で客数人のオマエと、かたや渋公で客2千人の俺。随分と差がついちまったもんだ。せいぜいウチのステージでも観て勉強すんだな。まあ、さらに落ち込むことになると思うけど。自分が底辺まで落ちたことを思い知れよ」
「テメェ!!」
 リュウは怒った。自分とショウとの境遇の違いになんかじゃなく、己のプライド――音楽と友達――を傷つけられたことに。ショウに怒りをあらわにしようとした時、リュウはマキオが震撼していることに気づいた。
「マキオ……?」