「リュウ、違うよそれは」
「えっ!? 違うの? 司法試験て弁護士になるための試験じゃねぇの?」
 マキオとリュウは歓談していた。テーブルの上にはクリームソーダとマダム特製クラブサンド。
「確かにそうだけど、司法試験に合格すると最高裁判所に司法修習生として採用されて、修習最後の司法修習生考試に合格すると法曹資格を与えられるんだ。それから裁判官になるか検事になるか弁護士になるかを選ぶんだよ」
「へぇ~。俺はてっきり弁護士になるための試験かと思ってたよ。だからマキオも弁護士を目指してるもんかと勝手に思ってた。で、どうすんのよ? マキオは何になりてぇの? 裁判官? 検事? やっぱり弁護士か?」
「わからない……」
「わからないってお前!?」
 マキオは答えられなかった。裁判官になりたい理由を? いや、本当にわからなかった。マダムの時とは違い、以前のような理由も他の理由も、気持ちの中のどこにも見当たらなかった。かといって司法試験の受験をやめたわけでもない。受験はする。何のために? 最難関の国家試験だから――。今、マキオを突き動かしているものはプライド。と、リュウの存在。