『綺麗……』


瞼を開けて空を見た時、わたしは心からの言葉を呟いた。


ふいに、喫茶店に向かう時にすれ違ったカップルを思い出す。


「綺麗」と雪を見て呟いたあの女の子も、もしかしたら切ない想いを抱えていたのかも知れない。


一一恋がしたい一一


そう思った。


わたしも宝物を見つけよう。


願わくば、たくさんの大切なものに囲まれて笑っている未来を。


一一今はもう少し、この雪を感じていたいけど一一


アスファルトに積もった雪を踏み締めるように、わたしはゆっくりと歩きだした。





一完一