『悪い、遅くなった』


『ううん。マスターとおしゃべりしていたから、平気』


達也はマスターに「すみません」と言うように頭を下げて、わたしの目の前に座る。


『ごめんね、先に一人で頼んじゃった』


『いや……遅れたオレが悪いし。マスター、ブレンド』


達也はマスターに笑顔を見せると、コートを脱いだ。


『外、雪降ってるぞ』


『うん。わたしが来る時ちょうど降って来た』


わたしはブレンドを口に運ぶ。


ほろ苦さが口の中に広がった。