「ミユね~。お客さんに本気で付き合って欲しいって言われたぁ…」


お弁当をもそもそと口に運びながら、俺の顔色を伺うように、ミユキが言った。


「ふーん」


そんなのはお構い無しに、テレビで流れてる新クールのドラマに夢中になっていた。


ミユキの目を見ず、話をしていた。


「若くて~顔も悪くない。ちゃんと仕事もしてるし、年齢的にも収入はいいよ?
それに優しい…」


段々とミユキの声が小さくなっていく。


段々とイライラしてきて、何度も貧乏揺すりをする。


「真央は、変わってくれないの?」


ミユキがいった瞬間、ドラマがCMに入った。


「何が言いたいわけ?さっきから、ミユキが付き合いたいなら付き合えばいいだろ。俺は引き止めもしねぇよ。俺、お前に告られた時いったよね?俺はこの先も変わらないし、変わるつもりもないって。
そしてミユキはそんな俺でも一緒にいたいっていったよね?」



目の前のミユキは涙を堪えているのか、顔を真っ赤にし、俯いた。


「それでも…
それでも…
いつか変わってくれるって信じてた


酷いよ…」



酷いのは、どっちだ。


俺は約束を破ったつもりもないし、裏切ったこともしていない。


最初から、俺には何も期待するなといったはずだ。


勝手に期待したのは、お前の方だろ?



人に対して吐く言葉の中で「信じる」なんていう言葉程、押し付けがましい言葉はない。


そりゃあ、相手が「信じろ」と言っているなら話は別だけど。


俺は出来ない言葉は言うつもりはないし、無責任な言葉は余計に人を傷つけるだけだと思う。