「おかえり、仕事終わったのか?」


眠たい目を擦りながら、体を起こしたあとクーラーのリモコンに手をのばし、消した。

二時間は寝ていたであろう。


クーラーをつけっぱなしにした部屋は、散々冷えていた。


「うん。お弁当買ってきたんだ。食べよ?」


そう言いながら、お弁当の袋を見せた。


俺の家の台所が散らかっているところを、俺は見たことがない。


何故か俺の家では、誰もが料理というものをしようとはしないからだ。


ミユキがレンジでお弁当を温め、冷蔵庫からベットボトルのお茶を取りだし、テーブルの上にボンッと置いた。


そんなミユキを見つめていた。


視線を感じたミユキは俺に顔を向け、「ん?」と微笑みながら俺を見つめた。


そんなミユキを抱き寄せ、目を瞑った。



微かに、石鹸の匂いが絡み付いていた。




──ミユキは、風俗嬢だ。


俺より2つ年下の、十八歳。


ミユキは俺の家の合鍵を持っている。

けれどそれは、俺達が恋人同士だからではない。


このマンションに引っ越してきた時の、敷金礼金。家具。そして引っ越してきてからの家賃に至るまで、俺は全てをミユキに世話になっている。


世間一般的にいえば、それは'ヒモ'と呼ばれるのかもしれない。



抱き寄せたミユキは、俺の胸にうずくまり'世界一幸せだ'と言わんばかりの顔をする。


その時丁度、レンジの音が部屋に鳴り響いた。