梢はジーパンのポケットから煙草を取りだし、火をつけた。


そしてテーブルの上に、ジッポと共に煙草を置いた。


マルボロの煙草が、2つ机に並ぶ。


梢のジッポには、MとKの頭文字が彫られている。


いつかは忘れたけれど、いつかの誕生日に、俺が梢へと渡した物。


テーブルに並べられたもう一つのマルボロを手にとり一本くわえると、梢は可笑しそうにげらげら笑った。



「何だよ」


「マルボロって浮気者が吸うんだって。真央にピッタリね」


「お前ウザイって。俺は一途なんだよ」



「─知ってる」



梢のブルーのコンタクトレンズが、ガラス玉のようにキラキラ光った。



梢は20歳で俺と同い年。


特定の彼女は作らない主義の俺だったが、もしも誰かに「彼女の顔を思い浮かべて」なんて言われると



一番に思い浮かべるのは、きっと梢の顔だと思う