ベッドに雪崩れ込み、キスをしながら胸に手を触れた瞬間。



リョウの手が、俺の頬を目掛けて飛んできた。


バチン─…
何も音のない世界で、その音だけがまるで空気を破るよう、ぶっ飛んできた。


何が起こったか、理解できなかった。



「ダメ!!」



空いた口は塞がらず、俺は酷くマヌケな顔をしていただろう。



出会ったその日にセックスをしたがらない女の気持ちは分かっていたつもりだった。


けれど、出会ったその日に男を家に泊めて、キスまでしといて、体を許さない女の心理は分からなかった。



空いた口は塞がらないまま、俺は強制的に床の布団に押し退けられ、リョウはフカフカのベッドの上で、満足げに体を埋めた。



──ふざけんなって


これはいくらなんでも、蛇の生殺し状態だろ…


悶々とする気持ちを抱えたまま、それでも次に手をだそうものなら、次は足が飛んでくる。


そんな事を考え、渋々俺は布団を頭から被った。