その夏は、何故だかとても早く通りすぎて、大切な物をキラキラに散りばめられた夏だったような気がする。



2000年。


俺はその時二十歳だった。


俺は十八の時親元から離れ、それからはずっと一人暮らしをしていた。


一人暮らし、というのは違うのかもしれない。

俺は一人であって、いつも一人では無かったから。





目の前が真っ暗だった。真っ暗な世界の中で、誰かに追いかけられている気がした。


けれどそれが誰かは分からない。


俺はいつも誰かに追いかけられていた。



「お、真央!!」


耳の奥で微かに自分の名前が呼ばれてるのを感じ、俺はぼんやりする意識の中で目をゆっくりと開いていった。


寒い

暑い


矛盾した想いがさ迷った。


変な夢を見たせいか、首もとが汗ばんでいるのが分かる。けれど汗が流れた部分はクーラーにより冷やされ、ただ寒いと思った。


俺の顔をペシペシ叩く女に気付く。


爪には真っ黒のマニキュアを塗っていて、日焼けした肌に金色の髪をウェーブさせていた。


そんなピアスをつけていて、耳は重くないのか。そう言いたくなる程大きなワッカのピアスが耳をじゃらじゃらと揺らす。



「───ミユキ…」


そう呼ぶと、ミユキはニッコリと微笑んだ。