「触んなよ~!」


リョウは容姿に似合わない低音の声で、マスターの肩にパンチをするフリをした。


「あっは。まぁゆっくりしていけや」



新たにきた水商売風の女のボトルを出し、マスターは女に向かい合って器用にお酒を作り出した。


「リョウってさぁ…なんか男みたいな名前だよな」


「あはは、よく言われる。でも真央も女みたいじゃん」



リョウの笑った顔は、可愛かった。

特に特徴もなく、恐らくリョウは世間一般的に言えば可愛い部類には入るタイプなのだと思った。


第一印象は無愛想なタイプだと思ったが、それはただ単に人見知りが激しいだけ、と本人は後で付け加えた。



「リョウは何歳?」


リョウは19歳。


「リョウは仕事は何しているの?」


リョウは一応大学生。


そんなとりとめのない会話しかしなかった。


それでも俺は頭の中の計算を張り巡らせ、リョウは俺のいいカモになる、と思った。



俺が20歳。
リョウは19歳。



どこかが似てるけど、全く知らないリョウとの出会いだった。