「真央って名前、女の子みたい」



──女にしては低いハスキーボイスで喋る女だと思った。


真っ黒の名刺に「ホワイト」と店名が白い文字で書かれている。

その下に「真央」という名が刻まれていた。

目の前のカウンター席に座り、真っ直ぐにのびた茶色のセミロングの髪を揺らし、茶化すわけでもなく、かといって真剣な表情なわけでもなく、微妙な顔を俺に向けた。


女みたいな名前だね。そう言われる真央という名前が、俺はあまり好きではなかった。


「よく言われるんだよねぇ~!!」


俺はそんなことはなんでも無い、というような軽い口調でげらげら笑い、目の前にいる女を見つめた。



俺が女を見つめると、女は微かに微笑みを浮かべ、パッチリとした二重の黒目がちな瞳を俺に向けた。



「目が可愛いね」


俺がそう言うと


「あなたもね」


女はそう言った。



季節は夏真っ只中。

お店には数人の客。

店員は俺とマスターだけ。




アイラインで目の回りをガッチリと囲み、付け睫をバッチリとつけたその瞳は


俺にソックリだと思った。



それと同時に、全く別の人種だとも思った。