「やめて……──」


体育館の近くに行くと、莉乃のか細い声が聞こえた。


"橘って手ぇ早いんじゃなかったっけ?"


杉下先輩の言葉が頭を過(よ)ぎる。


莉乃────



声のした方へ全速力で走って向かった。


そこには、橘っていう男が自分の唇を莉乃の顔に近付けていた。



ぎゅっと拳を握り、橘に向かって振りかざした。