男の子があたしの隣に座る。
そばにいるだけで心の温かさって伝わるもの。
「…まだ…
野宮のこと好き?」
男の子が不安そうな顔で訊ねる。
尚なんか…
もう嫌いだよ。
大嫌い。
「尚は…嫌いだよ」
「そっか…
坂口は頑張ったと思うよ?」
男の子の一言でまた涙が溢れ出す。
「…ありがとう…」
「泣くなって…」
遼は泣き出すあたしをそっと支えてくれた。
あたしは気付かなかった。
この時、ほんのちょっとだけだけど…
運命が動いたこと。
「…やべっ、もう20分じゃん!!」
「えっ」
このままじゃ遅刻。
でもまだ学校には入りたくない。
モジモジしてると
「行くか、」
と言って手を掴んで連れていかれた。
「えっ、ちょっ…」
遼は何も言わず、強引にあたしを引っ張っていく…
その背中が、とても大きく見えた。
あたしより身長は低い男の子だけど…
すごく男らしい雰囲気がした。
遼?
あたしね、遼に出逢えたことは運命だと思うんだ。
一億分の遼に会えたって、奇跡だよね。
遼はあたしに出逢ったこと、後悔していませんか?