「…おはよっ☆」
教室に入って明るく挨拶をする。
すると、
「美緩おはよ~♪
ねぇねぇ聞いて☆!」
桜(さくら)が笑いながらあたしの方に来る。
桜の後に続いて、茉夢も。
「あはは~桜ちゃん笑いすぎだって♪」
「そんなに笑ってどうしたの~?」
話についていけないあたし。
「さっきね~、藤堂(とうどう)がさ…」
「あはは、鏡見ながら腹だしてんの!!」
藤堂というのはバレー部顧問の男教師。
言っちゃまずいけど…
自分はかっこいいと思っているただのバカ。
その藤堂が…
鏡見て腹出してるところを想像する。
「ゔえ゙…」
想像しただけで気持ちが悪くなった。
「「「気持ち悪い~」」」
3人が声を揃えて言う。
その時、ふと窓から外を見ると尚と女の子が見えた。
女の子は尚の彼女のような感じ。
「………」
「…美緩ちゃん?」
「美緩…どうしたの?」
急に黙るあたしを見て、茉夢と桜が心配そうな顔で聞く。
あたしの視線はずっと尚とその彼女らしき人に向けられていた。
なんで?
学校の前でいちゃつく意味がわかんない。
尚なんか…
尚なんか…
早くどっかに行っちゃえばいいのに…
悲しみと怒りが重なって不思議な感覚になる。
涙が溜まって、尚とその彼女が二重にぼやける。
「…美緩」
「美緩ちゃん…」
涙でぼやけるあたしの視線の先で、尚と彼女が…
路上でキス……――
「美緩?!」
「キャー!!」
「誰か先生!!」
みんなの声が聞こえる。
意識が遠のく。
何が起こったのかわからない。
あたしはただその場に倒れてしまったのだ…。