あっという間に靴箱に着いた。



「坂口、何組?」



「あたし?1-Aだよ?」



「俺Dだから、じゃあね」


「うん。…あっ…ありがとっ」



遼は後ろ向きのまま手を振って、走っていった。


遼の背中が『ガンバレ』と言っていた。


「遼、ありがとう…。
あたし…頑張るよ」





時刻は8時23分。

あと2分で遅刻。




「…やばっ!」


ダッシュで階段をかけ上る。




教室に入る勇気が出ず、ドアの前に立ちすくむ。




「坂口さん」



と言われ、肩を叩かれた。



振り向くと担任の先生が笑顔で立っていた。



「どうしたの?入りなさい?」


「あ…はい」



勇気を出して教室に入る。

みんなの視線が気にならなかった。



「おはよ、美緩ちゃん☆」


席につくと同じ班の茉夢(まゆ)が挨拶してくれた。




「茉夢、おはよ」



あたしも挨拶を返す。




「どこ行ってたの~?心配したよ~」


「うん…ちょっとね」


「そっかぁ…」





「朝読の準備をしてください」



茉夢と話していると文化委員がそう言った。


本を取り出して読む。




中身は全く頭に入らない。



ただ、頭の中を駆け巡るのはさっきのシーンと尚の言葉。



唇を噛みしめる。


涙がこぼれ落ちそうで…