「ねぇ、アツシ!急にどうしたの?何怒ってるの?」

私に背を向け、立ったままのアツシ。


「・・・ねーんだよ。」


「えっ?」


「なんでわかんねーんだよ!」


振り返ったアツシは切ない瞳で私を見ていた。


その瞳に何も言うことが出来ず、ただアツシの顔を見ていることしか出来なかった。


するとアツシが近付いて来て、ギュッと抱き締められた。


「ア、アツシ!?ちょ、ちょっと離して!」


「ヤダ、離さない!エリ、もっと自分がモテるって自覚しろよ!」


「えっ?」


「お前は知らないだろうけど…エリを狙ってるヤローなんて大勢いるんだぞっ!今日だって…」


アツシに抱き締められたまま、その言葉に胸がキューンと締め付けられた。


「エリって昔から鈍感すぎなんだよ。俺の気も知らないで…」


「アツシ…」


アツシは腕の力を緩め私の体を離し、今度はまっすぐ私の顔を見つめた。


「他のヤローに触らせんなよ。エリに触れていいのは俺だけなんだから…なっ?」


「…それって!?だって、アツシには彼女がいるでしょ?」


「彼女じゃねーし!好きな奴いるって言っても信じねーから、部屋にある写真見せてやっただけ。」


「写真?」


「中学の卒業式のと高校の入学の時の写真…」


「アツシは…私の事何とも想ってないと思ってた。だから、彼女だって…」


「今まで何ともないフリをしてたんだよ。エリだって…彼氏と楽しそうにしてただろ!」


「彼氏?」


私に彼氏がいたことなんてないよ?


「前に見ちゃったんだ…。部屋で男と楽しそうにしてるとこ…」


「えっ?…それ違う!あれは友達が好きな人とうまくいったって2人で報告に来てくれただけだよ!」


「…それ、マジ?」


「マジ!その男の子はヤマダくんだから!」


まっすぐアツシの瞳を見つめて言うと、またギュッ抱き締められた。


「エリ…好きだ。ずっと好きだった。」


そういう私の耳元でそっと呟いた。


「私もずっと好きだった。」


私達はその日、幼なじみから恋人へとステップUPした。


*END*