「中塩く―ん!!」
ライトスタンド方向から黄色い声援が飛んでいる。



今日は新チーム初の公式戦、大学での試合ということもあり観客もけっこう入っていた。



「シオ、叫ばれちゃってるし!」

リョースケがうらやましそうにシオをこづく。



「シオ効果…、こんなに観客いたのはじめてだ!」

タクさんが驚いたように言った。


「なんかテンションあがるわぁ!」

ヨースケさんもそう言って念入りにグローブを磨きはじめた。




シオ、
「でも今日は、翼が初お目見えだからなっ!」

マサキ、
「そうやん!シオのファン全部持ってかれるぞ~!!」


杏はあからさまに嫌な顔をした。


「あはは…」
翼が興味なさそうに相づちをうった。

うつむいてスパイクのヒモを結びなおしている。



リョースケ、
「翼クール!野球以外は興味ありません!みたいな~」



翼、
「杏ちゃん、ボールちょうだい!」


「お!!」
杏は急に言われてびっくりした。

シカトされたリョースケは白目をむいて怒っていた。





一番きれいなボールを探して、



そして、ありったけの
『頑張れ!』

を込めて…





「いってらっしゃい!!」

杏はそう言って翼にボールを手渡した。