「野球できなくなったりしないですよね?」

病院のロビーに杏と原田さんが座っている。

心配そうな杏を見て、原田さんが優しく言う。

「翼は投打のそろったいい選手だからね。大丈夫だよ、野球の神様が守ってくれる…」





杏はケンちゃんの帽子を握りしめる。




(野球の神様は、あんなに野球が好きだったケンちゃんを守ってはくれなかった。翼くんにも爆弾を持たせた…)





「野球の神様なんていないと思います…」

杏が静かに言った。



「そうかなぁ?」
原田さんは相変わらずの笑顔だ。


「翼はいるって言うと思うよ。」