胸に何かがつっかかっているようで、胸が苦しい。
そんな事を考えながら、慶兄の鼓動に耳を澄ませた。
時折頭を撫でてくれる大きな手が、ささくれ立った心をなだらかにしていくようだ。
「ねえ、慶兄」
「ん?」
話したい事って……なに?
「もうすぐ帰って来るかな」
「う〜ん…まあいい時間だな」
言いたい事も言えない。聞きたい事も聞けない。
触れてしまえば、何だか今の状況が変わってしまうような気がする。
「あいつらが居るとホントに暇しねえからなぁ」
「発想が子供っぽいもん」
こうして普通を装っていれば、確信に触れる事もない。
何もかも今までと状況は変わらない。
壊したくない。
私の大切な場所だから。大切な人ばかりだから。
「反対にももはもっと子供になっていいと思うけど」
「……え?子供に……??」
慶兄の言葉に顔を上げると、優しく目を細めている慶兄と目が合う。
部屋の証明が入り込んだ色素の薄い瞳は、キラキラと輝いている。
「もーちょっと、子供っぽくてもいいと思うけどな?て意味」
「…若年寄??」
「そうとも言う」
眉をしかめて答えた私に、慶兄は笑いを含んで答えた。
「考えが大人って事」