「んげー、降ってきたなあ」



ザーッと言う、まるでバケツをひっくり返したような大きな音が、突然外から聞こえてきた。

大きな窓を見ると、先程まで晴天だった空が、灰色に様変わりしている。



季節が夏になろうとしている。



突然の雨に、風船のように気持ちが萎むようだ。



「ねえ、龍ちゃん迎えに来てとか連絡くるんじゃない?」


「てゆーか来るな」



美春の声に、笑いながら宗太が答えるが、私もそう思う。


そんな会話を遮るように、慌ただしく宗太の携帯が鳴りだした。



タイミングの良さと噂をしていた事で、当然龍雅からの連絡だろう。


と思っていた私は、宗太の声に胸が飛び跳ねた。



「ん?るぅ……?…はーいもしもし」



雨の音が大きくて、携帯から漏れる声は聞き取る事なんて不可能だ。



「るぅちゃん?どうしたのかなあ?」


「本当に気まぐれだなあ〜」




美春と慶兄の言葉も、耳をすり抜けていく。



るぅ…何やってるんだろ……?



こんな事、今まで考えた事なかった。

やっぱり、離れている程気になってしまう。


「慶兄も居るぞ〜。……ん?ああ、そうだけど…うん」



瑠衣斗の話す言葉は、どんなに耳を澄ましても聞こえないだろう。


思わずハッとし、意識を別へ移そうとテーブルのアルバムへ目を向けた。