頬にそっと触れた慶兄は、優しく私をの頬を撫でて見つめた。
そんな優しい眼差しに、胸の奥が熱くなるようだ。
「うん。…ゴメンね」
「…何で謝るんだ?」
思わず本音がポロリと出てしまい、慌てて身を引いた。
「あ…のぉ……心配掛けちゃったから」
「ももは謝りすぎー!!」
ニコニコ笑いながら言う美春に、曖昧に笑う事しかできず、何も言えなかった。
瑠衣斗の言葉が、私を可笑しくする。
気が付くと、その言葉の意味をずっと考えてしまう。
どんなに考えても答えは出ずに、私を思考の渦へと沈めてしまうんだ。
「んあぁ…ごめんっ」
「はは、早速また謝ってんじゃねえかよ」
「もものおっちょこちょい♪」
慶兄も美春も、龍雅も宗太も誰も知らない。
耳鳴りがする。
瑠衣斗の話は、誰も知らない。
私と瑠衣斗だけの約束だから。
思い出せないもどかしさが、私の心を落としていくようだった。
「この慶兄とるぅちゃん格好いい〜!!…あ、俊ちゃんが一番だけどね?」
「はいはい。ありがとうございます」
私は、慶兄を傷付けてどうするつもりなんだろう。
私の考えている事を知ったら……慶兄は……?
「もうすぐだよな?夏休み」
「にゃ〜〜!!楽しみぃ〜!!!!」