「俺言ったよなあ。我慢すんなって」



言われた。強がりとも。


でも、自分ではそんなつもりないんだもん。



瑠衣斗に唇を塞がれたあの記憶は、瑠衣斗の優しさも鮮明に蘇ってくる。



「…言ってた…けど、我慢なんてしてない」


「してんだろ?泣いてたんじゃねぇのかよ」


「あ、雨が目にたくさん入っただけ」



言い訳にしか聞こえないセリフをダラダラと並べる私に、瑠衣斗は眉根をどんどん寄せる。


そんな顔しないでよ。何で今度は怒ってんの!!


そんな事も言えず、じっと瑠衣斗の言葉を待った。



待ったが、聞きたくない。

口を開かせたらいけない気もする。




「約束。いい加減思い出せ。俺もある意味そろそろ限界」


「…はあ?限界とかある約束なの?」


聞いた事ねえよ!!



思わず心の中で突っ込んでみたが、約束した事すら覚えていない私は、それ以上は何も言えなかった。



「おんめ〜…鬼だな」


「だから何が!!」


話が脱線してる気がするけど、逆にその方がありがたい。


私からは言いたくないし、瑠衣斗からも聞きたくない。



「…ももが思い出さないと俺は何も言えねえんだよ」


「私?私が思い出さないと言えない事ってナニ」



そんな約束…本気で覚えがないよ。

何も言えないって、るぅは何を伝えようとしてるの?



「思い出したらすぐ分かる」