胸の奥から、ぽっと暖かい物が灯ったようだ。
それが全身に広がって、まるで広い湖畔に波を描くように広がる。
それが大きなさざ波になり、ザワザワと心を揺らす。
「もう、1人で耐えなくていいんだ」
優しく諭すような瑠衣斗の声に、俯きながら頭を横に振った。
胸がズキズキして、苦しいんだ。
瑠衣斗の言葉は、あっけなく私に入り込んでしまって、胸に突き刺さってくる。
その言葉は、あっけなく私の作り上げてきた物を、いとも簡単に壊していくみたいだ。
「…俺じゃ頼りねえ?」
クスクス笑う気配がしたが、私は顔を上げることができなかった。
違うよって言いたいのに、喉に詰まったように言葉なんて出てこない。
熱いものが、ぶわっと溢れ出してきて、止める術なんてない。
なんだか沢山の事が頭をよぎっていくようで、その映像が余計に熱いものを溢れさせる。
優しく抱き寄せた瑠衣斗の肩に、目を伏せてギュッと閉じる。
私から溢れ出してきた物が、瑠衣斗の肩に流れ落ち、艶やかな肌を滑り落ちていく。
「泣き虫」
ポンポンと優しく後頭部を撫でられ、それが合図のように私は声をあげた。
「っ…うわーん」
違うもん。
るぅが何か変な魔法でも使ってるんだよ。
そう言いたいのに、私の口からは泣き声しか出てこない。
頭に浮かぶのは、たくさんの家族の顔。
家族の事で泣いた事なんて、今までなかった。
貯まりに貯まったものが、タカが外れたように溢れ出し、止まる気配もなかった。