…―――も、もも。




名前を呼ばれた気がして、重い瞼を薄く上げた。


見慣れぬ景色が、オレンジ色の豆電球によって浮かび上がっている。



何か夢を見ていた気がしたけども、胸に残る後味の悪さが尾を引くだけで、思い出せない。



「もも?大丈夫か」



ふと気が付くと、暖かい温もりがすぐ間近にある事に気付き、声のした方へ顔を向けた。



「うなされてたけど…怖い夢でも見たのか」




キラリと光を取り込んだような瞳が、心配そうに私を写す。


優しく添えられた手の温もりに、小さく頬を緩めた。



あの声は、るぅだったんだ。




夢の中にまで、私に手をさしのべてくれたようで、何だか嬉しくなる。



「大丈夫。ありがとう」



「……そうか」



まだ少し、瑠衣斗が何か言いたげに口を開きかけたが、何も言わずに私を引き寄せる。


瑠衣斗の胸の辺りに頬をくっつけると、優しくて力強い鼓動が私を包み込む。



優しく背中を撫でてくれ、暖かい気持ちが胸一杯に広がる。



満たされているはずなのに、何とも言えないモノが背中合わせに居座っているようだ。



「俺、実家で自分の部屋に女入れんの、初めてなんだよなあ」



「…自分の部屋…?」



ポツリと呟いた瑠衣斗の言葉に、一瞬意味が分からずに静止する。



自分の部屋…?るぅの…部屋?




「そ。中学の時までずっと使ってた部屋」



「…え?」